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農業と科学 平成20年4月
本号の内容
§水稲中苗マット育苗におけるエコロング肥料の普及
北海道空知支庁 空知農業改良普及センター
空知南西部支所
地域第二係長 藤田 雅久
§稲麦二毛作地帯における水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」によるプール育苗法(第2報)
宇都宮大学農学部附属農場
准教授 高橋 行継
(前 群馬県藤岡地区農業指導センター)
§チューリップ球根栽培の省力化について
富山県農業技術センタ一 野菜花き試験場
主任研究員 井上 徹彦
北海道空知支庁 空知農業改良普及センター
空知南西部支所
地域第二係長 藤田 雅久
水稲育苗に対するエコロング肥料(エコロング424-M100)の施用効果は,これまでにも実証され各地で成果を挙げている。しかし,北海道では育苗土と肥料を混ぜる手間が敬遠され,現場にはなかなか浸透していなかった。
近年,エコロング肥料の専用施肥ホッパーが開発され,効率的に散布できるようになり,普及する体制は整った。
ここでは,南幌町でのエコロング肥料の施用効果と地区に普及した事例を紹介する。
南幌町(以下,当地区)は,北海道の中央西部の石狩平野のほぼ中央部で,札幌市から車で1時間程度に位置している。比較的積雪量も少なく,平均耕地面積は22haと大規模な水田地帯である。
水回転作率は50%で小麦・豆類・露地野菜(キャベツ,ブロッコリー,露地長ねぎ)を中心にした複合経営を主体にしている。
当地区の中苗マットの作付けは約900haを占めているが(水稲全体の作付面積は2,400ha),偏東風の影響などで,移植後に植え傷みが発生し,初期生育が悪い地域である。
これを克服するために,側条施肥の導入や側条施肥割合を増加するなどの方策を行っているが,根本的な改善までには至っていない。
当地区において、健苗育成による初期生育の促進は,収量を安定させるための重要な課題である。
当地区では,約10年前にエコロング肥料の施用効果が実証され,育苗土と肥料を混ぜる形で農家に導入された。しかし,混ぜる労力が必要なために一部の生産者では定着したが,大きく普及していないのが現状である。
今までに,エコロング肥料の施用効果は実証されているが,生産者は我が家・我が地域で効果が実証されないと納得しない。そのために,「健苗育成・省力化・収量向上」をキーワードに17年から施肥ホッパーによる展示圃を設置し,「使い勝手の良さや効果の確認」を行った。
ここ数年,展示圃箇所数をなるべく増やして,普及に取り組んできた(表1)。ここでは,H17年の展示圃結果を中心に報告する。

エコロング区(424-M100を箱当たり50g施用)は,苗乾物重(g/100本)が2.7gで,慣行区より約10%重く,根張りも良好であった(表2,写真3)。


また,施肥ホッパーでの散布も播種機の作業効率を低下させず,農家の満足のいくものであった(写真1,2)。


初期生育(6月25日調査)では,エコロング区の茎数は374本/㎡で慣行区より約17%多く,穂数でも4%多かった(表3)。出穂期・成熟期ともエコロング区の方が1日早かった。

㎡当たりの総籾数でも,エコロング区は慣行区を15%優り,精玄米重では23kg/10a増収する結果となった(表3)。また,18年の収量結果をみても慣行区よりも平均で20kg/10a増収し,効果が実証された(図1)。

エコロング区は,移植後の活着が良く(写真4),生育初期から茎数を確保したことで,収量・品質とも慣行区を上回ったと思われる。

育苗時の追肥が省力でき,健苗育成により安定した収量が得られたことで,展示圃を設置した全戸の生産者がエコロング肥料の導入を決めるなど反応は非常に良かった。このことで私自身も手応えを感じ,自信を深めた。
冬期栽培講習会で①エコロング肥料の施用効果,②施肥ホッパーにより省力的に散布可能,③費用対効果が大きいことの3点を報告した(図2)。生産者の反応は良好で、導入に前向きな生産者が多かった。また,エコロング肥料の施用効果を冊子に掲載し推進を図った。

南幌町でのH17年までのエコロング肥料の施用面積は250haから伸びなかったが,積極的に普及活動したことで,H18年は505ha,H19年は810haまで、拡大し,中苗マット全体の90%までに達した。これは,農協・関係機関と協力体制を取ったことが,面積拡大につながった(図3)。
また,農家から農家へ口コミで施用効果が伝えられたことも急激に面積が拡大していった要因である。

前述のように,エコロング施用率は約90%まで普及し,苗質・収量も安定してきでいる。
しかし,一部では「後半肥料切れする」や「施肥量が多いと生育がいい」などの声も聞かれた。そこで,H19 年は施肥量増加の検討を行った。
エコロング肥料の施用量は,箱当たり50g(慣行区)に対して75g区と100g区で検討を行った。
苗乾物重は,50g区(慣行)と同等であり,肥料切れや濃度障害などの症状はなかった(表4)。

初期生育は75g・100g区とも良好で,収量では75g区で11kg/10a,100g区で15kg/10a増収した(図4)。この結果を参考に,当地区でのエコロング肥料の箱当たり施用量を75~100gまで増やすことで,更なる苗質・収量の向上を目指していく。

エコロング肥料の普及は近隣の市町村でも行われており,徐々に拡大しつつある。その中でも,JA岩見沢は,普及センターと連携し,ここ2カ年で500haまで普及している。
今後,初期生育が悪い地帯ではエコロング肥料が大きく普及していくと思われる。
エコロング施用により,苗素質・初期生育の改善で,収量が明らかに向上してきている。
初期生育に課題を抱えている北海道稲作にとっては,非常に有効な技術である。今後,各地域で広がることを大いに期待したい。
また,当地区では,成苗ポットにおけるマイクロロング肥料(201-100)の施用効果もH17年から検討している。エコロング肥料と同様に施用効果がでており,一部の生産者は機械施肥を行い普及し始めていることを付け加える。
宇都宮大学農学部附属農場
准教授 高橋 行継
(前 群馬県藤岡地区農業指導センター)
水稲育苗箱全量基肥栽培は,本田生育に必要な肥料成分を育苗箱に播種時に全量投入し,本田施肥を省略する技術である。本技術ではきわめて精度が高い肥料の溶出制御技術が要求される。このため,チッソ旭肥料(株)から発売されている「苗箱まかせ」が唯一の専用肥料である。
筆者らは「苗箱まかせ」を供試した栽培試験を群馬県東部の二毛作地帯で1998年から行っている。本地帯の主な育苗期間は5~6月である。育苗期間としては気温が高くなる時期であることと,基本的に常時湛水状態であるビニール・プール育苗を利用したこともあり,試験開始当時は育苗期間中に肥料成分の過剰溶出が著しかった。このため面は著しく徒長し,本田移植後も濃度障害によって活着が著しく遅れた。
現在では製品改良が進み,溶出制御の精度は大幅に向上してきでいるが,前述のような育苗条件である本地域では,依然として苗が徒長する傾向がみられる。しかし,苗が徒長する危険性はごく小さく,育苗時期が遅い稲麦二毛作地帯においても,より安全に使用できるようになっていることを筆者の一連の試験から明らかにした(高橋 2007)。
前報では本地帯で可能な育苗期間は稚苗育苗日数の22日前後であると報告したが,実際には育苗日数を30日前後とする農家が多い。現地普及のためには,中苗育苗日数である30~35日までの育苗期間の延長を技術的に確立できれば,一層弾みがつくものと考えられる。そこで,育苗期間の延長について再検討したので報告する。
試験は2005年,2006年は群馬県農業技術センター東部地域研究センター(以下東部研究センタ一),2007年は東部研究センターに近接した館林市内の現地圃場で実施した。気温は東部研究センター内の気象観測データを利用した。
播種は2005年から2007年まで順に5月20日,5月19日,5月5日に行った。育苗期間は2005年から同様に30,29,36日間とした。育苗箱内の施肥位置は床土の上に肥料を層状に施用する上層方式とした。苗箱まかせNK301-100(以下,箱全量区)を用い,供試品種あさひの夢の基肥と追肥合計標準窒素量7kg/10aに対する40%減
(播種時設計値)の4.2kg/10aになるように箱当たり施肥量を設定した。播種量は乾籾100g/箱とした。出芽は平置き出芽法(山口ら 1991)を使用し,出芽揃い後はビニール・プール育苗(飯塚ら 1978)とした。また,苗箱まかせNK301を育苗箱内に施用しない区を標準区として設定した。標準区の播種作業等の耕種概要は箱全量区に準じた。各試験区の反復は3とした。
苗の生育調査を播種後8,15,22,30,35日目(35日目は2007年のみ)に行った。1区当たり20個体の草丈,葉齢を調査した。葉色はSPAD502を使用し,同15日目から1区当たり10個体を調査した。育苗期間中の肥料溶出量を明らかにするために,箱全量区の1区に2反復で埋め込み,各調査時に回収調査(2007年は育苗完了時のみ)した。
育苗試験の結果を表1,2示した。3か年共に箱全量区では播種後15日目から標準区に対して有意な差はなかったものの,葉色が濃くなり始めた。さらに育苗完了時には草丈の伸長や,葉齢の進展も認められた。その差は2005年の葉齢を除いて有意であった。特に2007年は苗の生育むらが22日目の調査以降激しくなった。


育苗完了時には苗の草丈は不揃い状態になり,葉色は濃い傾向が認められた(写真)。また,地上部風乾重,充実度も標準区との差が前2か年よりも大きかった。

育苗期間中の窒素成分の溶出率の推移を図1に示した。年次によって溶出率の変動は大きく,2005年は早期から溶出率が高かった一方で,2006年は溶出があまり進まなかった。2007年は34日目のみのデータであるが,溶出率はごくわずかであり,育苗期間中ほとんど溶出していなかった。

気温の推移を図2に示した。2005,2006年は平年よりも2℃以上気温が高くなった半旬はなく,平年をやや下回る気温の半旬もみられた。これに対して2007年は高温傾向が目立ち,ほとんどの期間で平年を上回った。育苗期間中の平均気温は18.7℃で,平年の17.9℃より0.8℃高かった。

稲麦二毛作地帯の水稲播種は5月上中旬,移植は6月中下旬になる。今回3か年の結果では箱全量区は播種後15日目頃から標準区に対して葉色が濃くなり始めた。同30日目には草丈の伸長や葉齢の進展も認められ、これまでの試験結果と同様に育苗中期から肥料の溶出が始まっていることが推測された。しかし,その差は有意ではあるものの,本田移植後の活着,初期生育を含めて実用的な問題はなく(高橋 2007),今回の一連の試験でも製品改良が進んだ2002年以降とほぼ同様の結果を得ることができた。
苗の生育は育苗期間の気温条件によって影響を受けた。3か年の検討中,2005,2006年は育苗期間の気温は平年並みか下回る期間もみられ(図2),30日間育苗でも箱全量区では苗の目立った伸長等はなかった。これに対して,育苗期間の気温が高かった2007年は,肥料サンプルの窒素成分溶出量はごく少なかったにも拘わらず,苗の伸長や不揃いが目立ち,葉色は苗が伸長した部分を中心に濃くなった。これらの現象から判断して,育苗期後半に入って肥料の過度の溶出が育苗箱内で始まり出していたことが推測された。しかし,移植作業や初期生育を含め,実用的な問題は発生しなかった(データ省略)。このように育苗期間が高温傾向になる年次には,依然として苗の過度の伸長や生育むら発生等の可能性があることが明らかになった。
2007年の育苗結果をどのように評価するかは,生産者や指導者側の考え方にゆだねられる面が大きい。実用的な問題はないことから,技術的には30~35日間の育苗も十分可能であると考えられる。とはいえ,生産者は育苗に対してとりわけ気を遣う傾向がある(高橋・吉田 2006)。このため,現場で本肥料の特性を十分に理解してもらうまでの普及の初期段階においては稚苗育苗を基本にし,これまで通り育苗期間を22日間程度に設定しておくことが望ましいと考えられた。
●飯塚国夫・金井博・島田忠男 1978
水稲機械植用箱苗の簡易育苗法.農及園 53:687-688
●高橋行継・吉田智彦 2006
群馬県稲作農家の低コスト・省力化技術導入に対する評価と意識及び普及に関する調査.日作紀 75:542-549
●高橋行継 2007
稲麦二毛作地帯における水稲育苗箱全量基肥専用肥料「苗箱まかせ」によるプール育苗法.農業と科学 75-1:19-20
●山口正篤・青木岳央・福島敏和 1991
水稲の平置き出芽法における温度管理-被覆資材と出芽時の高温の影響-.日作関東支部報 6:19-20
富山県農業技術センタ一 野菜花き試験場
主任研究員 井上 徹彦
富山県では,主に水田裏作でチューリップ球根が生産されている。県内には大河川によって形成された扇状地が広がり,球根生産に好適な透水性の高い砂壌土の水田が多い。また,ほ場の用排水施設が完備されており,稲刈り後にスムーズに球根を植え付けることができ,チューリップの生育時には,豊富な用水量を利用した畝間灌水や徹底した排水が行えるなど,チューリップの栽培条件が広範囲にわたって整っている。
しかし,1988年からオランダ産球根の隔離検疫制度が緩和され安価な球根が大量に輸入されるようになり,国内での球根単価が低迷したことから1993年には6,118万球であった球根出荷量が,2005年には2,720万球にまで減少した。
また,チューリップ球根生産における作業時間のピークは,10月の植え付け期,4~5月の病株抜き取り・摘花期,6~8月の収穫・調整・出荷期と3回あり,それらに加え,チューリップ栽培ほ場の確保や経営面積の拡大を目的とした水稲作業受託面積の拡大により,生産農家では労働の負担が一段と大きくなっている(館ら1997) 。機械利用の程度を動力運転時間の構成比で見ると,1995年の調査ではチューリップの植え付け作業は合計で10.8%,収穫作業は10.6%であり,水稲作ではそれぞれ22.7%,42.2%であったことから,チューリップ球根生産における機械化の遅れが著しいことがわかる。
このような状況の中,富山県では経営コストの削減による生産基盤の強化を図るため,関係機関が連携して省力・低コスト栽培の普及を推進している。ここでは,植え付け,病株抜き取り,収穫・調整,という3つの作業を軽減するための省力化に向けた取り組みを紹介する。
富山県でのチューリップ球根植え付け(1日30~45a)の慣行法は,
①肥料や土壌改良資材などを散布し,ほ場を全面耕起する,
②耕起したほ場の畝になる部分に専用の植え込み機(写真1)によって球根を6条で落としていく,
③約10人の人手によって株間や球根の向きを手直しする,
④覆土機を用いて覆土する(写真2)
という手順である。ほ場1枚を,耕起から植え付け・覆土まで1日で終わらせるために,植え付けには多くの人手が必要である。また,降雨の後に作付け予定ほ場の植え付けができるようになるまでに乾くには3日程度かかる。天候が不順な場合は,植え付け作業の可能な日数が限られてしまうため,天候の不安定さが生産規模拡大を制限する大きな要因となっていた。


そこで,雨の心配をせずに安定して植え付けすることを目的として,県内の球根生産者藤崎祐一氏により,「整畦植え込み機」(写真3)が考案され(藤崎 1997),2000年に製品化された。これにより,〔植え付け前〕天候が安定した土壌水分の少ない時期に,①ほ場に土壌改良資材を散布し,②成形ロータリーなどであらかじめ畝を形成する,〔植付け時〕整畦植え込み機によって,①その畝をロータリーで耕起しながら,②5本の直立の鋼管を通して土中に球根を落とし,③後方の整畦板によって畝を再形成する,という畝立て後植え込み方式が可能となった(浦嶋 1999)。

植え付け時はオペレーターの他に補助員2人で作業を行えるため,慣行法では約10人必要であった人手を大幅に減らすことで,植え付けコストの削減を図ることができる。また,整畦植え込み機を利用すれば降雨の合間を縫って植え付けることが可能なため,植え付け作業の分散化を図ることができるほか,土壌伝染性病害を抑制するために地温が10℃以下に低下してから植え付ける,いわゆる「遅植え」栽培にも対応することができる。
しかし,
①栽植密度:機械の特性上5条植えとなり,慣行(6条植え)の栽植密度にするためには株間が狭くなる,
②植え痛み:鋼管を通して球根が畝の中に落下する際に,既に発達が始まっている芽や根に傷をつけることがある,
③植え付け限界:遅く植えることで,年内の発根期間が短くなる,
など生育への影響やそれによる単収の減少が危倶された。
そこで,当試験場で整畦植え込み機によるこれらの問題について検討したところ,
①栽植密度:5条植えでも,従来と同じ栽植密度であれば単収は確保できる,
②植え痛み:品種により芽や根の発達時期に早晩があるので,品種により植え付け時期を調整する,
③植え付け限界:発根期間を確保するために,地温が5℃以下になる前(11月下旬~12月上旬)に植え付けを終了すると収量が確保できる,
ということが明らかとなった(飯村ら 2002) 。これにより,地温が低下してから整畦植え込み機を用いて植え付ける「畦中植え込み栽培」体系が2003年に確立された。
現在,この機械は省力機械としてだけでなく,土壌伝染性病害に対する耕種的防除技術(築尾ら 1997,多賀ら 2001)として普及を推進しており,土壌伝染性病害に感染しやすい品種を中心に「遅植え」栽培を行うよう普及指導センターなどが指導している。
ウイルス病などの病気にかかった株の抜き取りは,「フォーク」または「やり」と呼ぶ農具(写真4)を使って行っているが,晴天が続いて栽培ほ場が乾燥してくると畝が固くなり,抜き取り作業が困難になる。また,整畦植え込み機による植え付けでは球根の向きや株間が不規則になるため,球根が土中に残る,フォークを刺した場所に球根がない,など病株の抜き取りが難しくなるうえ,抜き取り時に隣接株を傷つけることもある。そこで,オランダで実用化されている「フローレット」を利用した病株除去方法を導入できるように農薬登録の適用拡大について検討した。

専用器具フローレット(写真5)を用い,第2葉展開期(4月上旬)から開花20日後の間に,第1葉(最下位葉)の茎に近い部分にジクワット・パラコート液剤を1株当たり1ml滴下処理した場合,球根をほぼ枯死させることが可能であった(井上ら 2007)。その結果,ジクワット・パラコート液剤(プリグロックスLまたはマイゼット)の,チューリップでのウイルス罹病株の枯殺に対する適用拡大が,2006年11月に認められた(表1)。


これにより,作業姿勢の改善や労力の軽減になり,労働負担も大幅に軽減されるとともに,抜き取り株を袋に入れて持ち運ぶ作業もなくなったため,病株の除去作業速度が大幅に向上した。また,同一時間で処理できる面積が拡大するため,今まで以上に球根品質の向上が期待される。
収穫作業では,畝の表層(球根の覆土部分)を削った後,掘取機によて地表に掘り上げた球根を,多くの人手によって拾い集める必要がある。その際,作業員は腰を曲げる時間が長く,また,袋に球根がたまるにつれて重量も重くなることから,労働負担の極めて大きい作業である。
近年,チューリップ用に改良したジャガイモ収納機「ポテカルゴ」(写真6)が一部生産農家や農業公社に導入されている。これにより,膝や腰を曲げ重い袋を持ちながら行う収穫作業から解放されるとともに,効率化により作業人員の削減も可能である。

一方,球根の水洗・初期乾燥後に行う,球根の古皮や根を取り除く調整作業については,これまでに様々な省力機械が開発されている。しかし,球根に傷が付くという問題がいまだ解決されていないため,生産者は調整作業を機械に頼らず手作業で行っている。掘取りから1~1.5か月後の球根出荷時期までに調整・選別作業を終わらせる必要があり,多くの人手を確保しなければならない。そのため大規模生産者は自分の作業場だけで間に合わない部分については,作業場所の確保やコストの削減を目的に,個別に営農組合などに外注している状況である。しかし,ほとんどの生産者は,自家労力を含め人手をかけて除根調整作業を行っており,早急な機械の改良・開発が望まれる。
以上述べたように,チューリップ球根生産には水稲作と比較して非常に多くの人手がかかっており,労働負担の軽減やコストの削減を図るために省力化を進めている。
生産者の中には「手に勝る機械なし」という信念のもと,従来型の手作業中心の作業で生産している人もいるが,現行の方法では生産コストのうち雇用労賃がその3~7割を占めていることから(2001年 砺波農業改良普及センター調べ),輸入球根との価格競争に打ち勝っためには,品質を維持したままで生産コストの削減ができるように,収穫・調整作業などでさらなる省力化技術の開発を進める必要がある。
今後もチューリップ球根の高品質化と生産コストの削減により,チューリップ生産基盤の強化を図っていきたいと考えている。